| 目次へ戻る |
| 食品微生物学講座(1時間目) はじめに 微生物の一般知識 微生物の種類と形態 微生物の増殖方法 微生物の増殖と環境要因 |
|
|||||||||||||
| 食品衛生検査機器バクットBACcTに付属の小冊子「食品微生物と食品衛生(非売品)」の一部です。 | |||||||||||||
はじめに |
|||||||||||||
| 微生物は普段我々の目にふれることはなく,顕微鏡を使用して初めて観察することができる.微生物を始めて観察したのは,オランダ人A.
vanLeeuwenhoek (1632〜1723)であり,その後 L. Pasteur (1822〜1895),R.
Koch (1843〜1910)の研究により,微生物が地球上で重要な役割を演じていること,人や動物の疾病がある特定の微生物により引き起こされることなどが明らかになった。 いうまでもなく,微生物が発見される前から人は微生物とかかわってきた.人は何千年も前からビールやワインなどの微生物を利用した発酵食品を作ってきたし,放置していたパンにカビがはえたり肉が腐ったりすることを知っていた。 ときには,伝染病の流行で多くの人々の生命が失われたりもした.そして長い間に蓄積した経験から,発酵食品をうまくコントロールして製造する方法や食物を腐敗から守る方法,疾病に対処する方法を身につけた。 今日,公衆衛生対策の成果により,ペストやチフスなどの恐ろしい伝染病は次々と駆逐され,少なくとも文明国と言われる国々ではその流行はほとんど見られない.しかしながら,いまだに食中毒事故は多発し,しばしば数百人,数千人単位の患者が発生する。 これは食品衛生管理がまだまだ不十分であることを示している。食品を製造・加工・輸入・調理・販売を行う営業者にとって,消費者に安全な食品を供給することがまず第一の使命である。食品衛生は,単に食品衛生法で規定されているからしかたなしに行うというのではなく,営業者自らが食品微生物と食品衛生に関する十分な知識を持って、それを実践していくことが重要である。 |
|||||||||||||
―1.食品微生物学編― |
|||||||||||||
微生物の一般知識 |
|||||||||||||
| 一般に黴菌(バイキン)と呼ばれるが,カビ・酵母・細菌・原生動物・ビールスに大別できる.この中で,食品衛生で特に問題となるのは細菌とカビ,酵母である。ここでは,この細菌,カビ,酵母について,その形態や特徴について説明する。 | |||||||||||||
微生物の種類と形態 |
|||||||||||||
細菌の形態 |
|||||||||||||
| 細菌はその形により球菌,桿菌およびラセン菌に分けられている。 | |||||||||||||
| 球菌の大きさは直径 0.5〜1μm (1mm= 1,000μm)であり,その配列や集合状態から単球菌,双球菌,連鎖球菌などと呼ばれる。桿菌は棒状の細菌で,大きさは普通は幅 0.5〜1.0μm×長さ 2.0〜4.0μmであるが,中には比較的短い形の短桿菌や幅に比較して長さの大きい長桿菌もある。桿菌のうち「’(コンマ)」型を示す短いものを孤菌と呼ぶこともある。 | |||||||||||||
酵母の形態 |
|||||||||||||
| 酵母には球形,卵形,長円形や円筒形など様々な形のものがある。 大きさは細菌に比べてかなり大きく、通常は球形のもので直径3〜12μm、円筒形のもので幅2〜4μmx長さ4〜20μmである。 |
|||||||||||||
カビの形態 |
|||||||||||||
| カビは単細胞生物である細菌や酵母と異なり多細胞の生物であって、その形態もかなり複雑である。 カビは糸状菌とも呼ばれ,糸状の菌体(菌糸)が集合して大きな菌糸体を形成し、外観は綿状になる。 |
|||||||||||||
![]() |
|||||||||||||
| 図1:微生物の形態 | |||||||||||||
![]() |
|||||||||||||
| 図2:微生物の大きさ | |||||||||||||
微生物の増殖方法 |
|||||||||||||
細菌の増殖 |
|||||||||||||
| 細菌は環境条件が適していれば,分裂を繰り返して増殖する。一度分裂したものが生長して次に分裂するまでの時間は細菌の種類や培養条件によって異なるが,大腸菌などでは約 20分,腸炎ビブリオではさらに速く 8〜10分である。 | |||||||||||||
| 細菌の中には,環境が悪化すると芽胞(植物の種のようなもの)を形成するものがある.芽胞は乾燥,熱などの悪条件に耐え,再び環境条件がよくなると発芽し,分裂増殖する。 | |||||||||||||
酵母の増殖 |
|||||||||||||
| 酵母は細菌とは異なり,出芽によって増殖する。まず,細胞の一部に小突起を生じ,次第に生長して,ついにはくびれて母細胞と娘細胞に分離する。酵母は環境が良ければ出芽による増殖を繰り返すが,環境が悪化すれば耐久性の胞子を作る。胞子は環境が良くなれば発芽し再び出芽により増殖する。 | |||||||||||||
カビの増殖 |
|||||||||||||
| カビは,菌糸の先端が伸長していき,分岐しながら生長する。菌糸体から分岐した柄の先端に胞子が形成される。胞子は環境の悪化にかなり抵抗性を示す。胞子は空中に飛散し,水分・栄養などの適当な環境で発芽して菌糸体にまで発育する。 | |||||||||||||
微生物の増殖と環境要因 |
|||||||||||||
水分と水分活性 |
|||||||||||||
![]() |
微生物も,他の生物と同様に発育するために水分を必要とする。 水は食品中で二つの形態をとっており,一つはタンパク質や炭水化物と結び付いた結合水であり,もう一つが自由水である。 食品中の自由水の割合を水分活性(Aw)で表す。微生物が利用できるのはこの自由水だけである。 食品の水分活性は乾燥によって低くなるほか,砂糖や食塩の添加によっても低下する。 図3に示すように,一般に細菌は水分活性の高い食品で増殖するが,酵母は比較的水分活性の低い食品で,カビではさらに水分活性の低い食品でも増殖する。 ただし,好塩性細菌はかなり水分活性が低くても増殖し,耐乾性カビや耐浸透圧性酵母ではさらに低い水分活性でも増殖が可能である。 |
||||||||||||
温度 |
|||||||||||||
![]() |
増殖に最適な温度は細菌の種類によって様々であるが,20℃前後のものを低温菌,35℃前後のものを中温菌,55℃前後のものを高温菌と呼び,病原菌はほとんど中温菌である。 カビ・酵母では増殖至適温度は25℃前後の場合が多い。 微生物の発育と温度の関係を図4に示す。 食品中の微生物の最低増殖温度は細菌・カビでは−11℃,酵母では−10℃とされている。 人の病原菌はほとんどが中温菌であり5℃以下ではほとんど増殖しない。 最高増殖温度は細菌でほぼ50℃,カビ・酵母ではほぼ60℃である。 細菌は凍結状態では徐々に死滅するが,かなりの長期間の生存は可能である。 |
||||||||||||
PH |
|||||||||||||
| 一般に細菌の増殖至適pHは6.5〜8.0であり,pH4.5以下になると増殖できない。しかし,乳酸菌などのように酸性域でも増殖できるものや,コレラ菌のようにpH8.0〜9.0でよく増殖するものもある。 カビ・酵母ではpH5.0〜6.0が最適であり,かなりの酸性下でも増殖する。 | |||||||||||||
酸素 |
|||||||||||||
| 細菌はその種類によって酸素の要求性が異なっており,増殖に酸素が必要な好気性菌,酸素があってもなくても増殖する通性嫌気性菌,酸素がないときにだけ増殖する(偏性)嫌気性菌に分類できる。 カビの増殖には酸素が必須である。 |
|||||||||||||
微生物の酸素要求 種類 酸素の要求 微生物の例 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
| 次のページへ→ | |||||||||||||