微生物学講座 | 5時限目 | Lecture

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微生物学講座【食品微生物編】5時限目「食品の微生物検査」 | 未経験の方のための基礎知識

飲食物は様々な微生物の汚染を受けている可能性があり、
条件によっては増殖する可能性を秘めている。
それが単なる腐敗細菌であれば品質劣化をおこすにとどまるが、病原細菌であれば
食中毒あるいは経口伝染病の発生につながる。

こうした潜在的危険性を予想して 公衆衛生の立場から法的に、
あるいは自主的に微生物学的規格が定められている。

衛生指標菌

微生物学的規格においては、病原微生物を直接検出する事もあるが、各食品に応じてその衛生状態を検査するための特定の細菌が指定されている。このような細菌を衛生指標細菌と呼ぶ。

一般生菌数

自然環境には多数の微生物が存在しているので食品材料である魚介類、畜産動物、野菜類などもある程度微生物の汚染がある。特に動物ではその腸管内に多数の腸内細菌が存在している。

このようなある程度の細菌の存在は、缶詰のような完全殺菌の食品でない限り、食品が衛生的に加工され、保存されたとしても避けられないものであり、また、食品の安全性の面からも問題はないと言える。

しかしながら、食品の細菌数が異常に多い場合は、その食品が不潔な取り扱いをされたり、細菌が増殖するような高い温度に放置されたことの証拠である。

現在、多くの微生物学的成分規格では一般生菌数として、中温細菌数を測定し衛生指標としている。一般に人の病原細菌は中温細菌に属するので、一般生菌数が多い場合は病原細菌が増殖している可能性があることを示している。

なお、一般生菌数はあくまでも衛生指標菌であり、その食品の真の細菌数を表しているわけではない。たとえば魚介類に付着している低温細菌などは、培養温度35℃ではほとんど増殖しないので、一般細菌数としては測定されない。

大腸菌群

大腸菌群は人および動物の消化管に常在する菌属であり、糞便中に多量に存在する。従って大腸菌群が存在する場合は、食品が糞便により汚染されていることを示す。経口伝染病など感染源は人や動物の糞便であるから、食品が糞便に汚染されているということは経口伝染病などの病原菌に感染する危険にさらされていることを意味する。

しかしながら、近年の研究によれば広い意味での大腸菌群は人や動物の消化管だけでなく自然界に広く分布しているので食品から大腸菌が検出されても必ずしも糞便汚染を示すとは限らないことが知られている。従って、今日ではより広い衛生管理上の尺度として考えられてきており、食品の細菌汚染を極力少なくするためになされた衛生的配慮を評価する指標とされている。

糞便系大腸菌群

大腸菌群の中で、44.5℃の培養温度で乳糖を分解してガスを発生するものを糞便系大腸菌と呼ぶ。これは、自然界に存在する大腸菌群はこのような培養温度でガスを産生しないことに基づいている。 大腸菌群汚染の高い食品では、大腸菌を調べたほうが糞便汚染の状況をより正確に知ることができ、従って、特に生鮮食品の衛生指標菌として重要である。

食品の微生物検査の実際

食品の微生物検査の目的には次の2つが考えられる。第一は、食品が、公的に定められた規格に適合しているかどうかを判断することを目的する検査である。第二は、微生物学的品質管理のための検査で、いわゆる自主検査がこれである。これには、原料の鮮度管理としての一次汚染菌の検査と、施設や器具、従業員の手指からの二次汚染菌に対する管理を目的とする検査がある。

一般的に、微生物検査の項目は、食品原料の種類、製品の形態によって異なるのはいうまでもなく、その検査の目的によって適切に設定されなければならない。

  • 主たる食品の微生物検査項目、および結果の評価

    食肉およびその加工品

    対象食品
    枝肉 一次加工肉類 二次加工肉類
    牛、ブタ、ニワトリ、羊 スライス肉、挽き肉、
    カット肉、
    および真空パック製品
    ハム、ソーセージ、ベーコン、
    および非加熱食肉製品
    検査項目および結果の評価
    1. 一般生菌数および大腸菌群

    食肉と食肉加工品とではその結果の評価に異なった判断を与える必要がある。すなわち、必ず加熱調理して喫食する生肉においては大腸菌群が検出されても衛生上大きな意味があるとは言えないが、喫食時に加熱しない食肉製品では大腸菌が検出されることは製造工程、あるいは保存時の取り扱いに不備があったことを意味する。

    2. サルモネラ菌

    生肉類ではサルモネラ菌のある程度の汚染は避けられないので、その汚染菌量を把握する必要があり、定量的な検査が必要である。加工食品では、サルモネラ菌が存在しないことを確認する必要があるので、ある程度試料の量を大きくして定性的な検査をする。

    3. ウェルシュ菌

    食肉による食中毒事故は、ウェルシュ菌が関与することが多いので検査を実施することが望ましい。大量のウェルシュ菌が検出された場合は、食肉原料の取り扱いが不備であることを示し、特に加熱加工される製品にあってはウェルシュ菌の増殖を助長することが考えられるので、菌数を把握しておく必要がある。

    4. ブドウ球菌

    加工の際の二次汚染菌として重要な病原菌であり、必ず実施したほうがよい。特に鶏肉はブドウ球菌の汚染率が高い。

    5. カンピロバクター

    鶏肉はカンピロバクターに汚染されている可能性が高く、行なった方がよい。

    魚介類およびその加工品

    対象食品
    鮮魚介類 一次加工品 二次加工品
    海産・淡水産鮮魚介類、
    冷凍鮮魚介類
    刺し身、寿司種など 魚肉ハム・ソーセージ、
    魚肉練り製品、塩乾品など
    検査項目および結果の評価
    1. 一般生菌数および大腸菌群数、大腸菌数

    鮮度管理、加工工程・品質管理面から必須である。一般生菌数では、低温細菌数を把握するため、35℃培養と25℃培養を併用することもある。

    2. 腸炎ビブリオ菌

    温暖な地域の海産鮮魚介類、およびその一次加工品は必ず腸炎ビブリオの検査をしなければならない。腸炎ビブリオの増殖は急速に行われるので、検出されてはならない。

    3. サルモネラ菌

    淡水産魚介類では行ったほうがよい。淡水魚の鰓や消化管はサルモネラ菌の汚染率が高い。

    4. コレラおよびNAGビブリオ菌

    コレラ汚染地域からの輸入鮮魚介類では必ず必要である。コレラ菌は検出されるか否かが問題になるので、多量の試料を用い増菌培養法によって検出したほうがよい。

    5. ブドウ球菌

    一般的な加工工程中の微生物管理として検査を行う。特にムキエビなど、加工工程で手指に傷を作りやすい製品では必須である。

    6. 耐熱性芽胞菌

    魚肉練り製品では副原料由来の耐熱性芽胞菌の検査も行うことが望ましい。

    卵およびその加工品

    対象食品
    一次加工品 二次加工品
    液卵、凍結液卵、乾燥粉末卵など 卵焼き、マヨネーズなど
    検査項目および結果の評価
    1. 一般生菌数および大腸菌群

    新鮮卵の内部は無菌的なものであるが、特に加熱加工製品中では菌増殖が速い。従って大腸菌群および大腸菌は検出されてはならないし、一般生菌数も低く押さえられるよう製造時の品質管理を行わなければならない。

    2. サルモネラ菌

    卵内部のサルモネラ菌保菌率は非常に低いが、ニワトリの糞便中のサルモネラが卵殻表面に付着する可能性は高いので、加工製品の検査は重要である。

    3. ブドウ球菌

    黄色ブドウ球菌は卵殻表面での汚染率が高く卵割時に汚染の可能性があり、加工の上での重要な管理項目である。

    野菜およびその加工品

    対象食品
    生鮮 加工品
    カット野菜など 漬け物、果汁など
    検査項目および結果の評価
    1. 一般生菌数

    生鮮野菜ではあまり適切な衛生指標にはならないが、洗浄の効果や鮮度判定のためには測定する必要がある。カット野菜などでは一般生菌数が定められている。

    2. 大腸菌群数

    カット野菜などでは加工時の衛生管理のために必要な項目である。

    3. ブドウ球菌

    耐塩性菌なので漬け物などでは増殖の可能性がある。

    4. 腸炎ビブリオ

    漬け物など塩分を含んだ加工品では二次汚染菌としての腸炎ビブリオの増殖の可能性がある。

    5. 酵母

    果汁類の変敗の原因となる。

    冷凍食品

    対象食品
    無加熱摂取冷凍食品 加熱後摂取冷凍食品
    (凍結前加熱済品)
    加熱後摂取冷凍食品
    (凍結前未加熱品)
    生食用冷凍鮮魚介類 シュウマイ、ハンバーグなど 海老フライ、ギョウザなど
    検査項目および結果の評価
    1. 一般生菌数および大腸菌群数、大腸菌数

    一般的な衛生指標となる.無加熱摂取冷凍食品および加熱後摂取冷凍食品(凍結前加熱済品)は一般生菌数と大腸菌群について検査し、加熱後摂取冷凍食品(凍結前未加熱品)は一般生菌数と糞便性大腸菌を検査する。

    2. ブドウ球菌

    加熱後摂取冷凍食品(凍結前未加熱品)では必要である。

    3. サルモネラ菌

    無加熱摂取冷凍食品では検出されると致命的な欠陥になるので、製品への二次汚染には特に注意する。検査には、凍結損傷菌の検出を考慮する必要がある。

    4. 腸球菌

    大腸菌は冷凍保管中に死滅、あるいは損傷を受けてその選択培地に発育しないことがある。腸球菌は冷凍に対して耐性があるので、冷凍前の糞便汚染の指標菌としては大腸菌より適正といわれている。

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