BACcT 導入実績 ユーザー様インタビュー

かわにしの丘しずお農場 株式会社
インタビュー

記念すべき第一回インタビューには、北海道士別市で農業生産法人を営んでおられる 「かわにしの丘 しずお農場」支配人 今井 裕 様にお伺いし、農業やめん羊事業に 対する想い、それと衛生管理とのかかわりなどについてお話を伺いました。

設立当初は建設業からのソフトランディングとしてビートの栽培に取り組んでおられ ましたが、4年前からサフォークめん羊の飼育に取り組まれ、2008年から枝肉の試験 販売を開始されました。

「自分たちの製品には自分たちが責任を持つ。命をいただく限りは1gも無駄にしな い。」そのような意識で羊肉の事業に取り組まれ、当初からBACcTを導入していた だき細菌検査に取り組んでいただいています。現在BACcT CORを導入していただ き、食肉(羊肉)製品の製品検査・工場内の環境検査を主におこなっていただいていま すが、今後レストランの調理場も含めた環境検査もおこなっていく予定とのこと。 全従業員が同じ意識で衛生管理に取り組まなければいけないと考えておられます。

今後の展開としては、2008年までは試験販売だった羊肉を2009年からは本格販売さ れるとのこと。どのような展開をされるのか楽しみです。

ここに記載の内容はインタビュー当時(2009年3月12日時点)での内容となります。
かわにしの丘しずお農場 株式会社

──本日はお忙しい中お時間をいただいてありがとうございます。 こちらにお伺いする前にファームレストラン μ(ミュー)でお食事をさせていただいたのですが、レストランのほうも最近はじめられた事業なのでしょうか?

そうです。レストランは昨年(2008年)11月1日にオープンしました。 ほんとに最近です。

──同行の二人もラム肉のほうをいただいたのですが、全然臭みがなくておいしいと感激していました。 ところで、早速なのですが、農場やめん羊の飼育を始められたのは、どういう理由があってのことだったのでしょうか?

ええ、ラム肉というのは香りはあっても臭みはないんですよ。ところで、われわれがなぜ現在の事業に取り組むようになったかということですが、もともと私たちは建設業を営んでいたのですが、ここ数年来の建設業の急激な減少にあって、何とかしないといけないということで異業種転換、いわゆるソフトランディングを図って色々と試行錯誤してきたわけです。実際は事業規模を縮小するほうが楽なのですが、地方でもあることですし、また、今まで我々を支えてきてくれたのは従業員であるということもあり、雇用を守りたいということで、業態をシフトしようということで始めたわけです。ただやることがないから農業でもやるかとか、そんな甘い気持ちで始めたわけではないのです。

うちの近くにオリゴ糖を作っている砂糖工場があるんですが、うちはトラックを持っていたこともあり、もともとその工場にビートを配達(運搬)していたんです。ところが、ここでも高齢化が進み、ビート農家がどんどん少なくなってきた。それと、幸いに農地もあったので参入しようと考えたわけです。で、どうせ参入するんだったら法人化しようと。農業生産法人にしないと、農地を購入するのも大変なんです。農地法があって普通の土地と違ってだれでも彼でも購入できるわけではないのです。それでビートのほうを始めたわけです。

かわにしの丘しずお農場 株式会社

羊のほうに関しては、サフォークランドという羊の街なのにそちらのほうもどんどん高齢化していって羊を飼う人もいない、値段も上がらない、外国製品に押されている、羊料理といえばジンギスカンしかない、といった状況でした。また、羊の肉は臭いというイメージがありますが、本当は食べてみたら全然そんなことはないということを分かってもらいたくて始めました。

──確かに、なかなか本州のほうには羊肉というのは広まらないですよね?

いや、まだまだですね。だから、それを広めていこうということでやっています。だって、国産のラム肉のシェアは4%くらいなんです。96%が外国製品で96%のうちの90%がオーストラリア・ニュージランド産で、あとはアイルランド産とか若干ありますが、ほとんどが外国産です。その96%のうちの消費の87%が北海道なんです。だから頭の黒いサフォークっていう種類はほとんどいないんです。士別市と焼尻(やぎしり)島くらいですね。なので、国産の4%のうちのサフォーク種っていうのはほとんどいないんです。でも、サフォークっていうのは質がいい、毛も取れるということで、飼うのが難しいんですが、やるんだったら徹底してやろうということで、サフォーク種を飼育しています。

かわにしの丘しずお農場 株式会社

──ところで、どういった製品を主に扱われているのでしょうか?

やはりほとんどはお肉ですね。今はCAS冷凍っていう冷凍の技術があるので、いったん冷凍してもほとんど生の品質のままなんです。普通は冷凍すると劣化して値段も下がってしまうんですが、冷凍での運送技術も発達しましたので、沖縄からでも注文が来るし、売れるんです。ですから、今は生肉とあと、ラム肉の燻製を作る研究をしているところです。あとはラム肉のカレー(レトルト)を作っています。

──ラム肉のカレーとはめずらしいですね。

ほとんどないですよね。でもまぁ、ラム肉自体がジンギスカンしかないのでね。 それで食肉加工場があったので、トレーサビリティーに関しては完ぺきなのですが、安心安全のために徹底して自主検査をおこなう必要があると考えたわけです。自分たちが自分たちの製品に対して責任を持とうということと、やはり命をいただくということに対する意識をもっと徹底させて、命をいただいてありがとうという気持ちを持って、いただいたお肉を粗雑な扱いはしないで、1gでも大切にしてきちんと評価されるお肉にしたいと思っていて、それが結局細菌検査にもつながってくるわけです。

かわにしの丘しずお農場 株式会社

──当社でも今後色々ご協力させていただきたいと思います。 そこでなのですが、当社にご要望などございましたらお聞かせいただけませんか?

そうですね。それぞれの食にかかわっている食品製造業者に自主検査をもっともっと啓蒙していって、こうしないと検査に通らないとか、法律がこうだからこうだというコンプライアンスの問題だけではなく、自らが意識的に検査をするように啓蒙していってもらいたいですね。生産者が大事に育てたものなので、それを扱う加工業者もちゃんとしないと、という思いがありますね。 うちはたまたま生産者でもあるし、加工業者でもあるし、レストランもやっているということで事業者でもあるし、食べれば消費者でもあるわけですし、そのような形でトータル的にやっているので、農商工連携の典型だと思うんですが、そのあたりを意識的にやっていかないとだめだという思いもありますね。

特に肉の業界ではこれからそういうことを意識的にやっていかないとだめだと思うんです。M社の問題もありましたし、偽装問題とか色々ありましたし、うちとしては人のことを言う前に自分たちが飼育している羊が、どういう親から生まれて、どういう飼料を食べて、どういう水を飲んで、どういう環境で育ってきたのかということをきちんとしないといけないと考えています。最近は多くのシェフの方が生産者を見に来るんです。その点うちでは衛生面にも気を使っているし、水や飼料にもこだわっているので、ここの肉だと安心だと言ってもらっています。

──では、トレーサビリティーに関しては完ぺきですね。

そういった意味ではそうですね。後は羊の系図もきちんとしていますのでね。血を濃くしないようにかなり気を使っています。

──農業をやっていかれるのは大変だと思うのですが、その点いかがでしょうか?

そうですね。結局今まで農業っていうのは家族経営が多かったのですが、これからは家族経営では大変だと思います。うちはまだ従業員がいて休みもローテーションを組んでできるし、やっぱりひとつの事業として農業に取り組まないと自給率の向上にもなりませんし、うまくいかないと思うんですよ。農業自体を魅力ある産業にしていかなければならないと考えています。

──農業の事業化ということについては、微妙な問題もあると思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?

結局、大企業がやるようになったらまた話は変わると思います。そうなるとかえって既存の農業者が圧迫されるんじゃないかと思います。だから、地元に根ざした企業がそのあたりをクリアして、雇用を創出していくことによって雇用を守っていくという立場になれば、若い人達が都会に流出するということもなくなるんじゃないかと思うんですよ。

──本日は長時間にわたり、貴重なお話をありがとうございました。

株式会社富士物産
インタビュー

今回は、山梨県富士山麓にHACCPの考え方を取り入れた本社工場を構える株式会社富士物産 様にお伺いし、食品の安全に対する取り組み、HACCP手法の導入や食品衛生検査器BACcTの活用方法などについて食品衛生管理部 責任者のトーサック路子様と、工場長の小林長治様にお話を伺いました。㈱富士物産様はスモーク製品の製造販売からスタートし、現在ではホテル・レストラン業界を中心とした業務用食品の加工販売を主に手掛けておられます。

あくまでも手作りにこだわりながらも、お客様の「安心」を担保するために衛生管理にも注力され、HACCPの手法を取り入れた衛生管理に努めておられます。

2007年5月にはHACCPの品質管理システムを取入れた本社工場を新設され、同年10月には日本惣菜協会よりHACCP手法支援法の規定による高度化基準認定工場として認定されています。

手作りへのこだわりと、そこにどのようにHACCPの衛生管理手法を取り入れていかれたのか?今回は衛生管理をする立場と製造をする立場の両者から、大変 参考になるお話を伺うことができました。

ここに記載の内容はインタビュー当時(2009年3月12日時点)での内容となります。

まずは食品衛生管理部 責任者のトーサック路子様に衛生管理への取り組みについてお話を伺いました。

──トーサック様は衛生管理の責任者ということですが、現在御社ではどのような方針で衛生管理をされているのでしょうか。

そうですね。衛生管理はもちろん基本中の基本になってきます。基本的にはHACCPの管理方法を取り入れた衛生管理を、工程ごと、部屋ごとにおこなっています。しかし、中でも一番大切になってくるのが自己管理です。いくら衛生部があっても把握できない部分もありますので、各エリアごと責任者に任せ、毎日の自己管理を報告してもらっています。少しでも体調の悪い人がいたり、傷が化膿している人がいたりする場合はすぐに報告者に通達できるように、常にコミュニケーションがとれる環境をつくることを心がけています。

──富士物産様では、6年ほど前からBACcTをお使いいただき、自主検査として製品や製造環境の微生物検査をおこなっていただいているわけですが、何か自主検査をおこなうようになったきっかけなどあったのでしょうか?

HACCPの手法を取り入れる前は、基本的に製品ができあがってから微生物検査をおこなっていました。ですが、それでは安全を確保できないということになり、製品の検体はもちろんなのですが、人の手のふきとり検査や調理器具の拭き取り検査がいつでも簡単にできるものはないかと探していたところ、機会があって日本細菌検査様の製品をご紹介いただきました。それがBACcTを使うきっかけになりました。

──BACcTを使って、自主検査を社内でおこなうようになって、自主管理の部分などで社内的に変わったところなどはございますか?

BACcTを使うようになって、2~3日で検査の結果が出て、すぐに従業員に報告できるようになったというところが一番いいところですね。やはり数値が自社で証明できるということが逆に従業員の意識を高めて、例えば「こういう数値が出たが、どういうところに気をつければいいのか?」という基準的な感じで使えますので、そういう意味で衛生面の観点ではすごく使いやすくていいものだなと思います。

──例えば普段の検査の内容ですが、社内的にはデータを蓄積されて活用されていると思うのですが、お取引先様に求められたりすることなどもあるかと思います。自主検査をされていることで社外的にお取引上でなにか変わったことなどはございますか?

弊社のお客様は主にホテルや結婚式場などで、全国的に展開しています。例えばホテルの場合など、どんなお客様のご依頼にも正確なデータをご提供できる微生物の証明データを提出してくださいと言われた場合すぐに検査結果を提出できるということで安心していただける、その部分がすごくいいところですね。

──確かに、そうして定期的に検査をされていることで、お客様に御社の商品は大丈夫という安心をしていただける裏付けのひとつになりますね。 ところで、御社の場合HACCPの動きも取り入れながらだとは思うのですが、BACcTでの微生物検査も含めて、今後衛生についてどのような形でより従業員の皆様に浸透させていこうとお考えでしょうか?

そうですね。衛生というのは日々気を使ってしていかなければならないことですので、検査して結果が良かったから大丈夫、安心ということではなく、常に検査し続けて、皆様に証明し続ける、ということが一番ポイントになってくると思います。ですから、調理器具や施設以外にも手の拭き取り検査の頻度などをモニタリングしながら社員全員に報告して、衛生講習会なども含めて現状を把握できる体制をとっていきたいと考えています。

──日々衛生管理に取り組まれる中で、変化を実感される部分などありますでしょうか?

以前と比べて一番変わったところは、社員が、責任者やリーダーでなくても「ここがこうでしたよ」、といった「声かけ」ができるようになったところですね。それだけ全体で意識して色々なところに目が行っているのかなという印象を受けます。

──例えばふき取り検査をおこなった翌日など、現場の皆様が結果を気にされたりすることもあるのでしょうか?

そうですね。「うちの部屋はどうですか?」など興味津々で聞いてくれるようになりました。そういうことが大事なんだと思います。常に言い続けることも大事ですが、やはり数値で見せてあげる、科学的な面から証明してあげるということも大切だと思います。

──今後事業を展開されていく中で、そうした衛生の部分も大きなPRポイントになると思うのですが、御社の衛生管理体制としてアピールされたいところはありますでしょうか?

株式会社富士物産

既存のお客様、新規のお客様を含めて、最近お客様からの見学が多くなって きています。見学が多いというのはありがたいことで、みんな緊張しますが、 やはり常にきちんとしていないといけませんので、そういう意味では多くの方に工場を見ていただきたいですね。それで安心していただければ それに越したことはありませんし、見ていただくことによって、お客様のほう でも当社同様衛生意識を高めていただいて、相乗効果で共に衛生管理をいい レベルで保つことができるような環境づくりをしていかなければいけないと思っ ています。

ですので、工場見学のご要望にはできるだけお応えさせていただいて、色々な質問にお答えできるようにしたいと思っています。最近では外資系のホテルなどはプロの衛生管理の人を入れて改装したりしていますが、それに負けていられません。製造という立場ではそれより上をいかなければいけませんので、常に情報交換できるようにしながらいい環境をつくっていきたいと思っています。

──当社へのご要望などありましたらお聞きしたいのですが。

微生物検査に関しては私たちは素人ですから、「簡単で、正確で、いいもの」があれば今後もご紹介していただければと思います。検査器具に限らず、調理器具なども高いものを追求すればきりがないですが、弊社の状況にあったものであればご紹介いただきたいです。

──HACCPの手法を取り入れようと思われたのは何かキッカケがあるのでしょうか?

やはり時代の要望というのはあると思います。これだけ様々な原料などが世界中から日本に入ってきて、色んな問題が毎日のようにあって、それを作った製造メーカーの責任も増していっています。そうした環境の中での「選択」ですね。もちろんあえてHACCPの認証を取らなくても製造自体はできることなのですが、やはりHACCPの認証があるのとないのとでは、お得意先様への印象は違ってくるというのが現実です。そうでなければ、基本的な衛生管理をして、きちんと品質管理をしていればいいことですので。やはり消費者の目がそういう流れになってきているということですね。

──今、食の安全・安心ということがよく言われますが、「安全」という物理的な部分と「安心」という心理的な部分が一緒にされている状況にあります。

まさにそのとおりですね。安心安全とパッケージのように言われていますが、安心というのはお客様が感じることで、私たちにできるのは「安全」を担保してお客様に製品を提供していくことだけです。どれだけ安全なものができるかは私たち次第ですから、そこをやるにはHACCPでの管理をやっていくことが必要になってきたということもあります。

──HACCPでこういう形で管理していきますと示してあげると、お客様にもわかりやすいのでしょうか?

私たちは30年この会社をやっていますが、以前は工場というよりもセカンドキッチンのような感覚で、その中で、品質重視でつくっていましたから、記録のことなどは頭にありませんでした。働いている人もプロばかりで、そういう人達は「記録になんて頼れない」という方が多いですので、まずその考えを変えるのが大変でした。はじめは「そんなの無理だ、できない」という言葉ばかりだったのですが、無理矢理やってもらっているうちに、理にかなってきたといいますか、何かあったときに「記録があってよかった」ということがあったりしましたので、お客様だけではなく、従業員にも一緒に証明していっている感じです。今では、記録をするのはお客様のためだけではなく、自分達のためにやっているということをかなり理解してきてくれています。製造日報などにも、たとえば不備があった場合はどういう不備があったか、どう改善したかなど、書いてくれるようになっていますので、やはり意味があるんだなと思います。ただ、まだまだパーフェクトではないですので、常に言い続けていかないとだめですけれども。

──やはり何でも継続していくのが大変ですね。

そうですね。やはりその点が一番難しいところですね。手洗いひとつとってもそうですが、慣れてきた頃が一番大変です。記録もそうなのですが、やはり毎日毎日言い続けていくことだと思います。まず一度仕組を整えて構成して、後は人間が、ソフトの面でやっていくしかないですね。ソフト面が一番重要ですから。 今や勘や経験には頼れない時代になっているということもあります。今まで以上に記録作業が増えたのも時代の要求ということになると思います。HACCPの認定にしても取ったからいいというものではなく、それが始まりで、現場と常にマニュアルを見直しながら、日々継続させることが大事なんですね。「一方通行にしないこと。」これが「継続」の鍵になっているんだと思います。

──そこまで現場の皆さんに意識が浸透しているのは非常に意味がありますね。

ここで、実際の製品の検査に立ち会わせていただきました。

検査を担当されているのは、衛生管理室 検査担当 羽田 美香様です。この日はBACcTを使用して「大根のブイヨン煮」を検査されていました。 羽田様が検査を担当されて約2年になるということです。羽田様は微生物検査を本格的にされたのは㈱富士物産様に入社されてからだそうですが、 操作が簡単にできるということで、抵抗なく始めていただくことができたそうです。

株式会社富士物産

次に工場長の小林長治様にお話を伺いました。

──まず御社の事業内容・コンセプトなどお聞かせいただけますでしょうか?

当社の社長が世界中飛び回っており、その時にスモークというものに興味を持ちまして、それが当社のスタートなんです。それがやがて宴会、婚礼などの洋食部門に波及していったという経緯ですね。モットーとしては「より美味しくて安全な料理をお客様に提供する」ということです。

──安全なものをつくる上で、小林様のほうから現場の方へ意識付けなどはされているのでしょうか?

ここ最近は安全面が重要視されていますので当社でもHACCPを導入しまして、HACCPの手法を取り入れた方法をメインに衛生管理をおこなっています。最初は社員もとまどいがあったのですが、今はそういうことをキッチリしなければ安全で良い商品はできないということを社員もわかってきました。

──小林様は製造する立場として、衛生管理をしていくということに対して抵抗などはございませんでしたか?

私もコック経験者ですので、食品衛生法など、衛生管理については勉強してきました。それをいかに現場に伝えていくかということが私の役目です。現場の考え方は分かっていますので、現場が受け入れやすい方法と環境づくりという点に関しては、やりやすい面もありましたが、こういうことは一度や二度言っただけでできるものではなく、やはり繰り返しが大切です。問題は次から次に出てきますが、ひとつひとつクリアしていくしかないですね。

──いい商品をつくるために工夫されていることなどございますか?

そうですね。工夫といいますか、当社の場合、製品作りはお客様からの相談から始まります。 「こういうものはできないか」などお客様の要望をお聞きして、我々でできることできないこと含めて やり取りをして徐々に製品が出来上がっていくという過程を取ります。また、それとは別に商品開発部門で弊社独自の製品をお客様にご提案する場合もあります。私たちの製品は多種多様にわたりますが、そんな中でもひとつひとつ丁寧に作っていくということにこだわって製造しています。

株式会社富士物産

──元々スモークから始められたとお聞きしましたが、そこから宴会料理へと急激に変化されたようにも感じられるのですが、その点に関してはいかがでしょうか。

創業してから最初の3年くらいがスモークだったと思います。そうしていくうちにお客様のほうから「こんなものをつくれないか」という要望をいただくようになり、どんどんアイテムが増えていきました。

──工場の導線計画など衛生管理部のトーサック様とご一緒にされたのですか?

ええ、私が製造側にたって、衛生管理部がHACCP側に立って導線計画をおこないました。お互いに葛藤する場面もありましたが、おかげさまでどのようなお客様が来られてもお褒めをいただけるような工場になりました。

株式会社富士物産

──例えば、他社の工場見学に行かれたりして、参考にできたり、なにか得られたりしたことはありますか?

先日もある工場の見学に行って来たのですが、それが2年間HACCPに取り組んできた成果なのかどうかはわかりませんが、色んなことが目に付きました。前の工場のときは、うちもそこに近いような工場で製造していましたので、「衛生面での管理が行き届かないのは古いせいだ」などと言い訳が多かったというのが正直なところです。しかし、今では、そうではなくて人間の考え方ひとつで、古い施設でもそれなりの工場やシステムはできると感じています。

──新しい工場を建てられて、HACCPの考え方なども勉強されたことによって、意識の変化があったということなのでしょうか?

変わりましたね。私も2年くらい前までは言い訳するほうの立場だったかもしれません。しかし、やはり工場長である私が変わらないと現場も変わってくれないし、言うことも聞いてくれません。個々が変わらなければ生き残っていけないんだということを現場も理解し、取り組むようになったんだと思います。

──本当に現場の方の生の声をお聞きすることができて、大変参考になります。弊社でも少しでもそうした御社の取り組みにご協力させていただきたいと思うのですが、何か微生物検査に対するお考えなどはありますでしょうか?

製造する側の立場からは、いいものを提供してお客様に喜んでいただくと同時に自己防衛にも気を配る必要があります。微生物検査にしてもそうですが、みな必要があってやっていることです。

──検査担当の方から工場に拭き取り検査に入られているとお聞きしましたが、抵抗とかはなかったのでしょうか?

最初は仕事に集中できなかったですね。検査が来るからそのための手洗いだったり、準備だったり、という感じでした。しかし今は検査に来る来ないにかかわらずやることはやるという風に変わってきています。普段きちんとやっていれば検査が入るからといってあわてる必要もないんだということです。それができるようになったのも検査の効果なのかなと思っています。

──今現在HACCPの手法を取り入れて管理されているわけですが、実際の現場でHACCPのやり方はうまく機能しているのでしょうか?

やはり、やることが増えますし、慣れていませんので、最初はどうなることかと思いました。仕事が機能しなくなるんじゃないかと。最初の一年くらいは仕事が終わらなくて、残業が多かったですね。でもそれも去年あたりから普通のペースに戻りました。

──内容についてはいかがでしょうか?

食品と衛生の管理は大きく改善されましたし、製品の質に関しても良くなっています。ただ、まだまだこれからの部分もたくさんありますので、衛生管理部と協力しながら少しずつ良くしていきたいと考えています。

富士物産様では約2,000種類の製品をほとんど受注生産で、しかも手作りにこだわって製造されています。そのような状況でHACCPのシステムを取り入れて認証を得られるまでに持っていくには、担当の方の相当の努力が必要であったことは容易に察せられます。それをこのようにさらっと語られるところに、やり抜いたことに対する自信と、これからも継続してやっていくという強い意志を感じました。富士物産様が今後どのように飛躍されるのか非常に楽しみであると同時に、当社も少しでもそのお役に立ちたいと強く感じました。このたびは長時間にわたり大変参考になるお話を聞かせていただきありがとうございました。

株式会社サンク
インタビュー

今回は、静岡県浜松市に最新の設備(HACCP高度化認定番号003)とシステムを導入した工場を構える 株式会社サンク 代表取締役 片山 博 様に色々とお話をお伺いし、会社の設立から社名の由来、食品衛生検査器BACcT導入のきっかけなどについてお話を伺いました。

社長の片山様は、平成3年に現在の会社を立ち上げられましたが、それまでは広告代理店に勤務されていました。

広告業界から食品業界へという全く違う業界に転身されたわけですので、立ち上げ当初は相当なご苦労があったようですが、そのあたりのお話も詳しくお伺いしています。また、微生物検査についても早くから取り組んでおられ、弊社BACcT(バクット)については平成8年にご導入いただいて以来すでに10年以上お使いいただいています。

BACcTが平成5年の発売ですので、本当に発売当初からお使いいただいていることになります。「自分たちのやっていることはあくまでも厨房のお手伝い。」そう言い切られる片山様の理念、微生物検査に対する取り組みや衛生を取り巻く環境の変遷、社名に対するこだわりなど色々とお話しいただきました。

「素人で始めたからこそ気づく点も多くある。」とおっしゃられる片山様。今後どのような事業を展開をされるのか楽しみです。

ここに記載の内容はインタビュー当時(2009年3月12日時点)での内容となります。

──早速ですが、御社では結婚式場とか厨房のお手伝いということをコンセプトに、多種多様なアイテムを取り扱われていますが、たとえばお客様のほうからこんな物を作れないかといったことを聞かれることが多いのでしょうか? それとも自社で工夫したものを提案されているのでしょうか?

色々なパターンがあります。こういうものを作れないか、と言ってもらえることもあれば、こういうメニューで何か提案がないか、と言われることもあれば、一緒にメニューを作らせてもらえるということもあります。逆に、こんなものがありますけど、何かメニューに加わりますか、というパターンとかもあります。当社としては便利に使っていただければいいという考えでやっていますので、厨房さんのご都合というところが大きいですね。また、当社は、厨房のお手伝いということをコンセプトに商売をしていますので、お客様の邪魔をするようなことがあってはいけないと思っています。あまりこちらからこんなものを作りたいとか、こういう風にやりたいとか、これを買ってほしいとか、そういうのはなくて、そういう風に便利に使っていただければいいかなという気持ちでやっています。

──多品種になるので、量的にもかなりになるのではないかと思うのですが。

先ほども言いましたが、私たちがすることはあくまでも「厨房のお手伝い」です。最初からそういうコンセプトでやっています。そういう感覚ですし、もともと私も調理の人間ではないので、どうしてもそういうふうになりました。それと、やってくれと言われないことを下手にやろうとしないこと。それだけを最初からずっと通してやっていて、それは会社を作った時から変わっていないんです。

──そのことがHPにも掲載されていました「お客様のニーズに合わせて」ということにつながっているかと思うのですが、ニーズというのがやってほしいことということになるのでしょうか?

そのやってほしいことというのを聞き出すことが私たちの第一歩ですね。だから、御社のBACcTを使っているのもそうなんです。お客様がそういう資料がほしいということがあって、そういうお客様のニーズに合わせて検査を始めたわけです。最初は外部に持って行っていたのですが、件数が増えてくると持って行くだけでも大変な手間でしたので。

──もともと外部の検査機関に持っていかれていたのが、どんどん検査に対するご要望が高まってきて自主検査を始められたということでしょうか?

私も週に何回も行っていました。そうするうちにいちいち持って行かなくても自分のところで検査してもいいのではないかと思うようになりました。最初はものすごく難しいのではないかと思って躊躇していたのですが、とても簡単に、専門的な教育を受けなくても検査ができると展示会でうかがって、当社の検査担当者とも相談して、これなら簡単に検査できるのではないかということで自主検査を始めたわけです。

──もう10年以上も前の話になるわけですが、弊社がこのBACcTを発売したのが平成5年ですので、ほんとに発売の当初からお使いいただていることになります。 発売当初から本当に長い間お使いいただき、当社としましても本当に感謝しています。 そこで、長年ご使用いただいている御社に、是非お話が伺いたいと思い今回改めてインタビューをお願いした次第です。

株式会社サンク

ここの工場は平成13年に作ったんですが、それまでは古い工場を借りてやっていました。当時はものすごく菌というのが問題視された時期でしたが、当社の前の工場は古いところを借りていたので、狭くなって増築したりしていました。それを今のように設備をきちんと管理するのは難しい状況でした。そうするとやはり疑心暗鬼になるわけです。そこでとりあえず常温で検査をして、それなりに結果が出て、悪い結果が出るとどこが悪いとか、良い結果が出たら安心できる、ということでしのいでいました。

そんな状況の中で、御社のBACcTと出会って、専門的な人じゃなくても、誰でも使える、パートさんでも菌検査ができる、ということで、「これは良い!」ということで導入させてもらいました。だから、当社としても非常にありがたかったんです。何件か、検査はどうしているのかと聞かれて、御社のBACcTをご紹介させていただいたこともあります。

──ありがとうございます。社長様にご紹介いただいたおかげで今お使いいただいているお客様もあるのだということに改めて感謝いたします。 ところで、この会社は社長様がお立ち上げになられたのでしょうか?

そうです。私は、もともと名古屋の広告代理店にいたんですが、CMを作るのはプロダクションが作るし、CMを流すのはテレビ局だし、デザインをするのはデザイン事務所がやるし、広告代理店はほとんど何もしないんです。男一代の仕事としてはちょっと寂しい、空しいものがある。大手さんと違って、私たちは社長が自己満足でやっているようなCMばかりで、ほとんど小さいクライアントさんばかりでしたので、広告で売り上げが上がったかどうかなんていうことは何とも言い難いものがありました。季節だからやろうとか、何かやらないといけないからやっているというようなものが多かったんです。たまたま私は、食品関係、ホテルさんとか、レストランとかそういうところのクライアントさんが多かったんです。だいたい、広告代理店っていうと、ステーキフェアとか何とかフェアとかいうとカメラを持って写真を撮りに行くんですが、そうすると、厨房の調理長も、自分は料理を作ってしまうとあとはすることがないので、珍しいから見にきたりして、結局2人で話をしているんです。色々話しました。あの頃はまさにバブルの時代で、調理長によると、厨房の中の人は、修行ということでは受け入れてくれないというわけです。私たちの時代だと、中学や高校を出て厨房に入って修行してというのが当たり前だったのですが、私たちより10何年も下になると、もう調理師学校を出てくるんです。学校では上等の道具と材料を使って料理をしていて、厨房に来て皿洗いをしろと言われても、そんなことのためにホテルに就職したんじゃないと辞めていくんです。だから、そういう風に辞められたらまた人手が少なくなる。だからあまりきついことも言えないし、というような話をしていました。

一方、当時はバブルの時代で、売り場が広ければどんどん売れるということで、リニューアルして厨房を削って狭くして、その分を売り場面積にしたりしていた時代でした。ですから、厨房はどんどん狭くなるし、人はいない。材料はなかなかいいものがない。もうちょっとこういう風に、ここまで加工してくれたらいいのに、とか色々と話をするわけです。こういうのが手間がかかるとか、だいたいそういう話をしているんです。なるほどと思うじゃないですか。それでたまたま縁あってこういうことをやろうかなと思ったわけです。仲良くさせてもらっていた調理長とかにも「いいじゃないか。」と言ってもらって、「よし。」と思って始めたんです。でも最初は毎月赤字ですよ。

──当初ですからね。

そうですね。まぁ、人も少なかったですから。仕事も、本当は厨房のお手伝いがしたかったのですが、最初はあまり厨房のお手伝いはできずに、バブルが崩壊して在庫をいっぱい抱えていて、原料のままでは売れないので、原料で持っているものを若干加工してという在庫処理のための仕事が最初の仕事でした。

それで、平成3年の12月に会社を興して、翌年の3月にこちらに来たわけですが、まず手をつけたのが、パートさんをシフト制にすることです。私は広告代理店時代に外食産業のクライアントさんが多かったんです。外食だとシフトを組んでいるんですが、こちらに来てみたら工場は仕事がないのにも関わらず朝から晩まで人がいて、仕事がないからといって黒板を見ているわけです。だから、会社が続かなかったら明日の飯が食えないんだから、仕事がなかったら帰ってもらえって言いました。仕事が入っている分でここまでは30人いるけど午後からは10人でいいと。それでいいんだって言ったら、そんなことをしたら皆辞めますと言うわけです。それが気に入らなくて辞める人は辞めてもらったらいいじゃないですか。私、働く人、私、雇う人。そんな関係じゃないんですよ。一緒にやらないと。会社っていうのは畑なので、みんなで耕していかないとダメなんです。ということで、外食のように時間をシフト制にしました。

それで、勤務の時間数とか能力などを加味して査定するわけですが、査定をするわけですから時給が上がる人もいれば下がる人も出てくるわけです。下がる人は、だいたい古い人でした。そういう人がへそを曲げると皆辞めますと言うわけです。でも、そんなことはない。正式に査定しているわけですから。最初はそうした私のやり方に戸惑いもあったようですが、私の言っていることもだんだんと皆さんに本音で言っているんだなと理解してもらって、だんだんお互いの理解を深めて、受け入れてもらえるようになりました。そして、能力のある人はやはり仕事がしたいんです。だから仕事を任せたらイキイキとしてきました。それはどこでも変わらないんですね。人間、本音で話をするのが一番いいんだし、建前とかいらないですしね。会社が潰れたら皆で討ち死にしないといけない。討ち死にするのは嫌だから、だから皆で頑張ってやりましょうと。

たまたまパートさんは家族があってお子さんがいたから、5時間とか6時間しか仕事ができない。だけど私らはそうじゃない。そういう立場にいるからこうやってやっているだけのことであって、私が代表だけど、たまたまそういう機会があったから代表をしているだけで、別にみんなに選ばれて代表をしているわけでもない。だけど、少なくとも代表をやっている以上責任はあるわけですよ。それは甘んじて責任としてやりますと。だけどそんなんことは別にして、みんな平等じゃないですか。一緒にやってくれと。そういうふうになるのに1年くらいかかりました。だからうちは、会社では役職が無いんです。呼ばないんです。だからみんな私のことは片山さんって呼びます。最初に会社を作ったときからそうなんです。

株式会社サンク

──それが御社の今の社風というか、本音で言いたいことを言い合えるという・・・。

そうですね。私が会社を作ったときの考え方なんですよ。会社を作った時に名前を「サンク」としたのですが、これは「ありがとう」の「サンキュー」の「サンク」なんです。なぜ「サンキュー」ではなくて「サンク」にしたかというと、「Thank you」だと「you」ですよね。でも、「Thank me」でもいいし、「Thank us」でもいいし、「Thank everything」でもいいわけです。すべてのものに感謝しようということで。周りにもありがとうと言うけれども、頑張った自分にもありがとう、身内にも、皆頑張ったね、という気持ちもあって、そういう意味もあって「Thank」で止めると。

それともうひとつは、そのとき考えたのが、日本語で「三つの苦」と書いてそれで「三苦」。去年、NHKの大河ドラマで「天地人」をやっていましたが、パクラれたなと思いました。「天地人」の「天」は天からもらった能力ですね、自分の。何でもう少し賢くできなかったんだろうとか、もっと頭が良ければ東大行ってエリートになってとかね。そして「地」というのは、家とか家族とか、何でこんな貧乏に生まれたんだろうとか、逆に金持ちに生まれて何でこんなに制限されなければいけないんだろうとかね。色々あるじゃないですか。そして「人」。これは周り。あんな先輩や、あんな上司に指示されてやってられるか、とか思うじゃないですか。だいたい。でも、今私が言ったことは、全部後ろ向きなんですね。批判的なことなんですよ。そういうことを乗り越えて、ここに生まれてきて、一応五体満足に生まれて「ありがとう」って。家族も貧乏人なら貧乏人で頑張れよっていうことで貧乏人に生まれて来たんだし、金持ちに生まれたっていうことは、それを使って頑張れよと生まれたんだし。周りの人は周りの人で勉強させてくれる。そうでしょう?そういう3つの「苦」ですよね。自分をいじめる。「なんだよ」って思う「苦」、その「三苦」を超えたときに、ありがとうの「Thank」を言えた時に人生ってムチャクチャ幸せになるだろうなと考えたわけです。

基本的にはそういう気持ちで「サンク」という社名をつけました。自分が勤めていた時に、何社か私も会社を替わっていますけど、その何社か行った中でも全然、平等じゃないんです。学校では、平等だとか何とか良いようなことを言われてきましたけど、社会に出たら全然平等じゃない。そういう、何でこんなに不道理なんだ、不公平なんだという経験をしてきて、少なくとも自分で作った会社は公平でありたいと思ったわけです。そういう意味もこめて「サンク」という社名にしました。もちろん持ち場はあります。野球でもピッチャーがあって、キャッチャーがあって、補欠もいます。補欠がいなかったら困りますからね。9人だけだったら、1人けがをしたらどうするんだということになります。だからやっぱり、補欠も大事なんです。しかし、当然人間の能力なんて様々なので、持ち場持ち場ということがあります。みんなが同じようにしろっていうのは、これは私は平等だとは思いません。それぞれの能力の中で皆といっしょに自分の能力を最大限に出してやっていける。そういう会社、そういう組織をつくりたいと思ってやってきました。

そういうことが私は一番やりたいことだったので、商売は二の次になっているような気もします。会社を作った時から、モノを売るとか売らないとかいうことより、理念と目的を明確にする。それから、社員の意識を一緒にするということのほうが大事だと思っていました。だから最初はずっと赤字だったんです。だけど段々火がついてきて、これはもう少し頑張ってやらなければならないと。それで、分かってくれる人は残ってくれましたし、分からない人はいなくなりました。

──それは仕方ないですよね。

そうです。だから、私は、自分たちのやりたいことをやったらいいと思っています。それは法律に触れることだったらダメだし、法人という法で認められた人ですから、社会的義務は果たさなければならない。でも、何にも縛られることはないと。一生懸命やって、こういうことをやりたいなと思ったらそれをやればいいし、という思いでやっています。それで、何をやろうかと色々と試行錯誤しているうちにだんだんとやりたいことが固まってきたという感じですね。

──社長様が自ら営業活動をされているのでしょうか?

そうですね。どちらかというと私は調理人じゃなくて営業の人間ですから。式場とかを回って、宿題をもらって、宿題をもらったら、できようができまいが必ずちゃんと回答を返して、ということをしています。回答を持って行って、こんなもの使い物にならないと言われたこともあります。でも、それがうちの今の実力なんですね。まぁ、それはそれでいいんです。だけど、そこから諦めずにもう一回持って行って、ダメだと言われたらどこがダメなのかを聞いて、5年10年かかってマルがもらえたらいいなと思ってやっています。

株式会社サンク

──結婚式に参列した際などに出てくるお料理はすごく印象に残るものが多いですが、あのような料理を作るには気苦労なども多々あるのではないかと思うのですが。

私も、厨房の営業に行く機会が多いのですが、調理長になっている人が料理がうまいかというとそんなことはないんです。ほんとに料理だけ上手な人は他にもたくさんいると思います。何が言いたいかというと、宴会だとか結婚式だとか、多量にできるだけ均一な品質のものを出していくということは、これはもう調理の域を越えて、システムでプロデュースするという、プロデューサーなんですね。

だからメニューも書けなければいけないし、コスト計算もできなければいけないし、それをメニューに載せたときに人がどれだけ必要で、時間がどれだけかかるかという、そういうことを全部イメージしてやらなければならない。その時にそのシステムの中でこの部分をうちでさせて欲しいと提案するわけです。そこで、その部分を自分でやるのか外へ出すのかということを理解できる、またそういう考え方をされている調理長は、「あ、そうか」と納得するわけです。ここのこの部分をやってもらえばここのところを短縮できるなとか、こういう料理もこういうメニューもできるなという発想になるんです。そうするとうちでどこまでのものができるかとなるわけです。それで、これではダメだとか。これならいけるとか。ここまでできるんだったらもう少し自分が指導すればいけるなということになったりもします。

──逆にそうやって調理長からのアドバイスを受けることによって御社の技術の向上にもつながったりするわけですね。

私は調理の人間ではないので、そういう調子で話ができる調理長のほうが話が合うんです。職人っていう人がいる産業というのは、まだまだ発展の途上なんですね。まだシステムができていないんです。厨房もそうなんですよ。今はあまり職人という言い方はしないですけれども、私が会社を始めた約20年前には、私たちはみんな料理職人と言っていました。職人がいるということはシステムができていないということなんです。こういう宴会だとか大量に均一の商品を作ろうというのは、トヨタのカローラを作ろうとしているということなんです。カローラを作ろうとするにはシステムが必要です。そのシステムをいかに構築するかということです。それで必要なものを必要な時に、その時にオンデマンドという言葉が流行りましたけど、作っていけば、無駄も出ませんし。

──ところで、お取引先のほうはエリア的には全国になるのでしょうか?

全国です。

株式会社サンク

──あと、介護食材なども展開されているということですが?

介護食材のほうは大したシェアではないのですが、特に介護の中でも嚥下食をやっています。老人が死亡する原因として肺炎が多いんですが、そんなに皆が肺炎になるかというとそうではなくて、食べ物が肺に入って炎症を起こして死んでしまうんですね。のどがだんだん老齢化してきて、肺に入れるものと食道に入れるものとの区別がつかなくなっているんです。それとあまり食べられないので、そうすると流動食になってくるんですが、液体だと肺のほうに行ってしまうんです。

だから、ゲル状というか、ある程度粘性が必要なんです。そうすると食道のほうに行くんです。ところでそういう介護施設に入れる人っていうのはある程度お金を持っている人なんです。だから若いころはおいしいものを食べていたんです。ところがそういう施設に入ったら食事がまずいんですよ。なぜかというと食欲がないと思っているんですね。大体食べるものは栄養士さんがやっているんですが、食事がたくさん残っていたりすると食欲がないんだとなって、だんだんやる気もなくなってくるんですね。でもそうじゃないんです。おいしいものだったら食べるんですよ。まずいから食べないだけなんです。食欲がないっていっても、皆が皆食欲がないわけじゃない。中にはそういう人もいるかもしれないですけど。そうなるとおいしいものを作ろうということで、うちのベシャメルソースで何かできないかなと考えました。色んな施設では、ベシャメルソースにゼラチンを使っているんですが、ゼラチンは温めると粘性がなくなるんです。でもある程度粘性が欲しいので温めずに食べさせるわけです。そうするとまずいわけですよ。それをうちは寒天を使って作っています。寒天は温めてもある程度粘性があるんです。温めてもゲル状のままなので、おいしいと食べてくれる。うちではベシャメルでそういうものを作って、施設に出させてもらっています。でも、論理的にはそういうことなんですよね。おいしければ誰でも食べる。まずければ誰も食べない。人間て正直だなと思います。

──ところで、また菌検査のことにお話を戻させていただきますと、「おいしさ」と「品質管理」というのは相反することが多々あります。 一時期「安心・安全」が前に出すぎた時がありましたが、その時に菌を殺すために加熱だけはしっかりしなければならないということで、食品がかすかすになったりしていました。

そういった部分で、これだけ多品種の食品を扱われているとご苦労もおありなのではないかと想像するのですが。

ありますね。実際今すごい日持ちの要求があります。解凍後15℃で96時間とか。おせちなどは5日間保たせろとか。コンビニの弁当でも30℃で72時間とか、そういうのが要求されます。そうなると添加物なしではできないですよね。何もそこまでしなくてもいいだろうと思いますけど、でもそれが彼らの言い分なんです。ルールをちゃんと守ってくれるお客さんばかりだったらそんなことはしないけれども、どんなお客さんが来るか分からないからということですよね。でも世の中不思議なもので、1%のそういう人、もっと言えば0.1%そんな人がいたら基準がそちらのほうに行くわけです。菌検査にしてもそうです。どこかで事故が起こったらそこに基準が落ちていくわけです。そしてどんどん基準が厳しくなっていくんです。何でそういうところに基準をもっていくのかよく分からないですけどね。全体を管理せざるを得ないということだと思いますから、まぁそれは仕方がないと思います。うちはものによって違いますが、ハッキリ言って厳しい状況が多いですね。

──BACcTを導入された10何年前と今とでは状況は全然違うのでしょうか?

それは全然違います。

株式会社サンク

──どういったところが一番違うのでしょうか?

データをしっかりほしいということですね。おせちなんかは4~5年前ぐらいまでは、そんなことは全然言いませんでした。それが3年前ぐらいからホテルの調理長が日持ち検査ってどうするのか聞いてきたりするようになりました。それで説明すると、えらく手間がかかるなと。そんなこと自分たちではできないなということになりますよね。だから逆に、今までホテルでやっていたことをうちでやらせてもらって、そういうデータを持って行ってというのがここ3年くらいですね。

──そういう意味では菌検査でデータが取れるというのが御社が仕事を取る上で強みになっているということでしょうか?

それはもう不可欠ですよ。昨日もあるホテルでおせちの話をしていたのですが、調理長が最近はうるさくて仕方がないというわけです。何でこんなにうるさいんだ。こんなもの必要かというわけです。そこで調理長に、調理長が厨房で作って、その場で食べられるという距離感だったら情報を全部持っていられるけれども、今は作るところから食されるところまでの距離感がどんどん広がってきて、また作るのも一人で作るんじゃなくて支流もたくさんできてきて、それが集まってきて、誰が作ったものかもどこで作ったものかも何が入っているのかもわからない。そうなるとそういうデータをみんな集めてこないと分からないじゃないですか。だからこんなに規格書がいるようになったんですよと説明しました。でもそれが分業制になった宿命というものでしょうと。お互いにやっぱりそういう分業の時代でやっている以上、次に渡すときにはそういうふうにデータを、情報を渡して、バトンタッチして、最後に食べる人が全部を見て、納得して食してもらうという時代になってきたんですよという話をしたら、それはそうだなと納得してもらって。そんな話を昨日もしてきました。

──そうした状況の中で、当社の歴史の中でも早くにBACcTをお使いいただいて、現在も検査を継続していただいているという形になるわけですね。

そう言ってもらえると嬉しいのですが、私は、基本的に現場には入りません。現場に入ると現場の論理で考えてしまいますから。文句は言いますけどね、決して自分ではやらない。それを一緒にやってしまったら言えなくなってしまうんです。作る側の論理を私も言ってしまうようになる。それではダメなんです。やはりお客様側の論理でずっとやっていかなければならない。だから、BACcTを採用したときも、ハッキリ言って工場はぼこぼこです。そんなところで検査なんかしたって何の意味があるんだと。そんなふうに社員も思っていたかもしれませんが、だけどお客さんはそれで安心してくれるし、私も安心できる。それから、菌という目に見えないものが見えるんです。検査したら菌がついているところもいっぱいありますよ。大腸菌が出たりとかします。そうやって検査して、菌が出ているのを見て初めて何でだろうと考えられるわけです。なかったら考えられないですからね。ぱっと見て「あ、大腸菌がいる。」なんて分かる人はいないですから。だから、やはり、そういう意味をこめてやっていたのですが、早かったとおっしゃるんだから早かったんでしょう。だから今それなりにデータの精度も出てきていますし、お客さんもあそこはそういうふうにやってくれるからということで、それがうちの力になってきていると思います。

──当社でも営業で飛び込み訪問とかをすると、昔はそんなのは関係ない、いらない、今まで大丈夫だから、といわれることが多かったんですが、最近はご購入いただけるいただけないは別にして、もうやっている、もしくは考えないといけないよね、とか耳は傾けていただけるようになりました。

そういう時代になってきたな、とかね。

──そうですそうです。そういった中で社長様ご自身が10年以上前から検査を始められて、今現在も継続して検査をしていただいているというところがぜひお聞きしたかったんです。 それとまた社長様が早いと思っていなかったという一言がすごく驚きなのですが。

私は自分では遅かったと思っていましたから。

──お客様からご要望があったのでということを最初におっしゃっておられましたが、逆に当社のほうもBACcT発売当初にそこまで色んな所でニーズがあったということを認識していなかったので、改めて今日それをお伺いして驚いています。

私も検査を始めたのが早かったというのは初耳ですよ。どちらかといえば遅いと思っていましたので。

──外部に検査に出すということでの要求はあったと思うのですが、そんな中で自社で検査を始められるというのは…。

うちはこんな小さな会社で、他に大きい会社はたくさんありますから、皆さん菌検査なんかはされているんだろうと思っていたんです。ところが、結構うちより大きい会社の社長さんから、検査はどうしいるのかとか聞かれて、こちらは逆に「え、していないんですか?」という人も何人かいました。

──確かにそうですね。絶対に検査されているだろうと思うお客様が飛び込んでみたらされていない時がありますので、今ではやらないとおかしいですよというお話をさせていただくんですけど。

そういう意味では驚きました。それには私が、食品でずっと来ていないということがあると思います。よくあるじゃないですか。築地なんかでも床にマグロをごろごろ置いていたりとか。だけどそういう世界の人はそれが当たり前だと思っているんですよ。でも、そうなるんだろうなと思います。だから私はよく言うんですが、現場でも、ゴミも3日経つと風景になって、1週間たつとオブジェになると。もうそこになくてはならないものになると。でもよそからきた人間から言うと何でこんなところにゴミがあるんだと思うでしょ。

その点私はそういう菌的なことには素人でしたので、そういうデータがあるのかと言われればすごく単純にど素人的に検査に持って行っていました。それは必要だろうと思って持って行くわけです。でも毎回行っていたら、行っているよりは自分で検査したほうがいいだろうと思うようになってきました。皆自分でやっているんだろうと思っていたんです。だからすごい設備がいるんだろうと思っていたんですね。そうしたらこんな簡易キットの小さいやつで、培地もちゃんと持ってきてくれて、費用的にもこれならうちでもできるし、そしたらどこでも検査できて、もっと検査ができるなと思ったわけです。工場内も検査できるし、手指の検査もできるし、定期的な検査もできるしね。これはいいなと思いました。それですぐにお願いしたんです。でもそれはやっぱり私が素人だったからですね。多分現場にいる人だったら、毎日手を洗っているんだから検査する意味がない、大丈夫だということになっていたと思います。

私は思うのですが、成功するとかしないとかいうよりは、潰れたらダメなんですよ。だから、経費節減して儲かって成功するよりは、経費をかけてでも、長く続いたほうがいい。そういう事故を起こしたら、大きい会社だって一挙に飛んで行ってしまうんですから。だから、日々の検査に払う経費なんて、比べ物にならないわけです。だけど事故を起こす危険性はいつもあるわけですよ。

──検査も全数できるわけではないですので、すべてをカバーしているかと言ったら”No”なんですが、日々の検査が安定化していけばいくほど危険性は低くなるということですね。

そうです。それとやはりそれが社員の意識づけになるんです。最初は目に見えないから分からないですが、検査をすると、「これだけの菌がいた」と分かるわけです。そうするとものすごく意識づけになりますね。だからやはり、すごく世の中にいいものを作られていると思いますよ。

──ありがとうございます。 ところで、HACCP高度化認定番号003というのをHPで拝見してすごく気になっていたのですが。

それについては、工場を作る時に、HACCPの高度化の認定をもらうと、安い金利のお金が借りられて、なおかつ30%ほど前倒しで償却できるというメリットがあるんです。認定をもらうには、農林水産省が指定する団体に所属して、そこで指定されると、そこを通じて認定がもらえるというシステムになっています。例えばうちは日本食品冷凍協会に所属していたのですが、たまたまうちがこの工場を作る時に、そこの部長さんがHACCPの高度化認定を取ったらどうかということで説明していただいて、これはやる意味があるなということで申請して勉強させてもらいました。ふつうはコンサルの人とやるのですが、うちはそうはしないで、自分で何回も行って協会に指導してもらって自分でやりました。だから図面とかも全部私が作ったんです。

──社長様がご自身で作られたんですか?

これなんですけどね。この時にはまだ他の仕事もやっていました。それでワンウェイを作れと言われて、もう土地は決まっているし、建物の位置もだいたい決まっていたのですが、建築家に図面を起こしてもらって、配置の部分から全部自分でやりました。

──では、最初からHACCPの手法に則った設計をされているということですか?

うちは少ロット多品種でやっていますので、HACCPは取れないですけどね。結局最初の土地だけを中小公庫で借りていたのですが、このHACCPは農林公庫しかダメなんです。公庫同士で客の取り合いはできないから駄目だということになって両方とも没になってしまって、結局できたのは30%償却できるという部分だけで、安い金利のお金は借りれなかったんです。しかし、ただで勉強をさせてくれたので、それはそれでよかったと、そういう風にポジティブに物事を考えようと思っています。

株式会社サンク

図面を引くのも、消防はできるだけ開放的にしろと言うし、工場はできるだけ閉鎖的にしたいし、狭いところで生産性も考えたいし、基本的には人が動く中で、人が動いていたら手間を食うのでなるべく人が動かなくてもいいように配置したいし、そのあたりの接点をどう取るかということで、3回くらいやり直しました。(図面を見ながら)ここが一階でここが二階なんですが、ここに階段があって、ここが中二階なっています。 で中二階で別れていって、こちら側に降りて行くと魚の一次加工ですね。こちら側がソースなどを煮炊きするところです。許可的にはここが魚介類販売という鮮魚の加工で、こちらが惣菜製造業なんです。で、惣菜製造業の下ごしらえをするところがここで、両方を全部冷蔵庫で仕切って、ここが独立になって、ここをクリーンエリアにしています。で、冷蔵庫に加工したものを一時保管して、ここでセットアップして、セットアップしたものを現場で全部袋詰めまでして二階に上げてきて、二階で外梱包をする。段ボール箱は現場に一切持ち込まないという設計で一応作りました。

──なかなかできることではありません。

その前からBACcTは使わせてもらっていたんですけどね。でも、タダでこうやって色々勉強させてもらいましたので、ありがたいと思っています。それから、お客さんのホテルさんだとか、生協さんでもだんだん厳しくなってきて、検査に来られるのですが、そうするとまた指導してくれるんです。みんなで寄ってたかって指導してくれるので、ほんとにありがたいです。食品のコンサルタント会社に頼むと年間100万は下らないですよ。それで責任を持ってくれるかと言ったら持たないですから。でもお客さんはやはり自分のところの商品ですから徹底的に言いますからね。これはダメですって。人それぞれ見地が違って、指摘するところも違って、だから一人だと偏りも出て来るんですけど、何社も来てくれるので非常にバランスよく指導してもらっています。全部ができるわけではないですけど、できるところから直していって、ほんとにありがたいと思っています。だから工場を見せてくださいと言われると、どうぞ来てくださいと言って来ていただいています。

──ぜひ私どもにも拝見せていただければと思います。 あと、これもHPで拝見したのですが、「独自に開発したユニフォームを必ず着用し」とありましたが、こちらも社長様がお考えになられたのでしょうか?

結局ユニフォーム屋さんで買うと、帯に短したすきに長しなんです。セパレート型になっているとどうしても髪の毛が出てきたりするので、うちは帽子と一体になっているのがいいんです。(実物を見せていただいて)こういうふうにくっついてるんです。

株式会社サンク

──特注品なのでしょうか?

特注です。たまたま私の知り合いにアパレル関係の人がいて、そういう話をしていたら、作ればいいじゃないかという話になりました。それで、ユニフォームを作っているところに行って話をしたら、それならという話になって、それでスタッフの人を集めてユニフォーム委員会というのを作って、色々と検討をして、現場の人が働きやすくて、安全面もカバーして、機能的で、やはり女性に働いてもらうんだから、安心して着てもらえるようなものを作ろうということで作ったんです。最初に作った時は、汗をかくことを考えて、Jリーグのユニフォームを作っているような生地でということで作りました。2回目のユニフォームを作った時は、抗菌性の素材で作ろうということで作りました。

──今は何代目なのでしょうか?

今は3代目ですかね。

──正直に申し上げてこのようなユニフォームはカタログなどでも見たことがありません。

誰でも作れると思うんですけどね。色々要望を言って作ってもらうだけですからね。

──お客様のご要望にお応えするというのはもちろんなのですが、従業員の皆様からの要望にも社長様が徹底してお答えになっておられるんだなということが今のお話でよくわかりました。 それと、なかなか実際に作るところまでされているところは少ないと思います。 菌検査を始められた時もそうなのですが、すぐに行動に移される、やろうと思ったらすぐに始められる。それができる方はなかなかいらっしゃいません。

だって、いいことはいいじゃないですか。

株式会社サンク

──そう言い切られる方もなかなかいらっしゃいませんので、やはりすごいことだと思います。

そうですか?それはまぁ、BACcTに払うお金が月に何百万とかになったら考えますけど、そんなにはならないですからね。それよりも安全とか、自分たちの尺度になるとか、そちらのほうが大きいですね。その価値観というのは大きいと思います。ユニフォームにしても、着たくないユニフォームを着て仕事をしてもらうよりは、着やすいユニフォームを着てもらったほうがいいし、それから異物混入、まぁ髪の毛の問題ですけど、それをクリアできるものになったほうがいい。ユニフォームを作ったところでそんなに経費はかかりませんが、クレームがきたらお客さんをなくしたりしますからね。ですからそんなに大した決断だとは思っていなくて、当たり前ぐらいにしか思っていません。

──社長様のように当たり前と言っていただけることがなかなかなくて、今まで出してないんだと言われる方がたくさんおられます。出していないのはすばらしいですけど、それが偶然なのか必然なのかは分かりませんなんていうお話はさせていただいています。

それともう一つは相手がある話なんですよ。自分は今まで出していないんだから、自分を信じろと言われても信じられないじゃないですか。そこでやはり、こういう結果ですよ、信じてください、って言ったら、なるほどな、ということになるわけです。世の中ってそんなものじゃないですか。書面に残るとか、データがあるとか、そういうことが証として、他人に対して説得する、分かってもらえる材料になるんです。以心伝心とかいうのは、やはりビジネスの世界では通用しないですよ。

──やはり自分が消費者の立場になって考えた時に、そうやってちゃんと検査をされている食材のほうが安心して購入できるというのはあります。

食べる側の人もこれが安全かどうかなんていちいち検査して食べるわけではありません。それを私たちが代行しているんです。代行して吟味させてもらっている。そういう責任があるんです。食品ていうのは凶器になるものです。一つ間違えたら人の命がなくなる、そういう凶器を預かっているんだということを私はいつも現場で言っています。そうしたらやはり、おいしいものを作るだとか、安全なものを作るだとか、それは使ってもらう人を代行してやらせてもらっているんだということを自覚して、責任を取らないといけないんです。先ほども言いましたようにうちはあくまでも厨房のお手伝いですから、お客様の邪魔をするようなことがあってはだめなんです。邪魔をするというのは、そういう責任を持てないようなことをするということです。私はよく言うんですが、手伝ってくれ、頼むと言われる時は、自分がそれをやるよりはそいつにやらせたほうがいいなというやつに頼むでしょうと。そういう風に思われる会社にならないと、そのレベルの仕事をやらないといけない。それはやはり信頼とか、技術的なことや安全だとかいったこともありますけど、それがあってはじめて仕事を頼んでもらえるわけです。そういうものがないと、あんなやつに言うぐらいだったら自分でやったほうがいいとなると思います。やはり手伝わせてくださいというからには、ある程度のハードルを越えたところでやっていかないと、手伝わせてくださいと言った時に恥ずかしいですよね。

──本当に勉強になります。

私はすぐにスポーツに例えるんですが、野球で助っ人って言ったら、だいたい4番を打つとか、そういう人ですよね。助けてと、手伝ってといわれるにはそれぐらいのレベルになろうということです。

──最初のお話から一貫していますね。本当にそう思います。

だいたいいいモノだけがあってもダメなんです。そういうデータ分析のようなものもあれば、味だとか、値段だとか、やはり全部及第点以上取っておかないとダメなんです。その中にひとつでも1点があったらこれは致命的です。そう思います。

──色々お聞かせいただいてありがとうございます。 最後になりますが、今後どういう風に事業を進めていかれるおつもりなのかをお聞かせいただければと思います。

別に今のやり方を変える気もありませんが、やはり、社員全員みんな人生がありますので、とりあえずこの会社で飯を食えるということ。それを考えると、長続きするということが最大のテーマですね。そのためには、私たちはこういうニッチなことをやっていますので、あまりもうかってはいけないんです。だいたいもうかることをやったらもうかっているなということで装置産業化して、大資本が来て持っていかれるんですよ。だからよくあんなもうからないことをやってるな、と思われるような、そういう規模の仕事をこれからもやっていこうと思っています。

──全て手作りだということでですね。

そういう仕事をいかにやっていくかということです。そうなるとやはり、一番最初に戻りますけど、「厨房のお手伝い」なんですね。黒子で、表には出ない。

だけど、そんなものじゃないですか、人生って。あまり先を読んでも仕方ありません。そんなことよりは着実にやっていくこと。目標を掲げてどうのこうのとか、そんなことはあまり私は思わないんです。そんなことよりはゴキブリのようにしぶとく生きる。そのことのほうが私はよほど重要だと思っています。

色んな業界にいるんですよ。そんなに目立たないけど着実にやっている会社が。そういう会社は世の中の流れに敏感です。そういう会社になりたいと思っています。ぱっと出てきてふっと消えるような会社ではなくて。

──維持するというか一定であるというのは一番難しいところですね。最後に、何かご要望とかがあればお伺いしておきたいのですが。

検査の仕方などもご指導いただいていますし、先ほども言いましたが、使い方も簡単なので、要望といってもそうないですけど、検査のことってあまり外に出さないじゃないですか。だから先ほどもうちが検査を取り入れたのが早かったと言われて驚きました。そういう意味では業界で現状どうなのかということを知りたいと言えば知りたいですね。

それ以上ということでしたらもっと安くしてということですかね。だけど先ほども言いましたように、月に何百万も払っているわけでもないですし、クレームが来たら一瞬で飛んでいってしまいますからね。それにお客さんに対してだけじゃなくて社内に対しても意識づけになりますので、別に私は高いとは思っていないのですが。

──今後も頑張らせていただきますので、よろしくお願いいたします。本日は長時間にわたりありがとうございました。